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夏の小休止
 
 開いたドアから押し出されるような形で電車を降りたが、これは僕の意思で、だ。足早に改札へ向かう人々を感じながら、顔を上げることのできない僕はベンチまでの距離をうまく測れずにいる。東京といえどもローカルな雰囲気のあるこの駅に、実際に降り立つのは初めてだった。閑散とした構内に背を向け、冷や汗の滲む顔を両手で覆う。どこからか漂ってくる焼けたチーズの匂いは気分の悪さを助長させ、思わず顔をしかめる。指の隙間から風景を眺める。線路脇に佇む向日葵は、不安げな面持ちで陽光を探していた。古い造りの茶色の柵から微かな風に乗ってシャボン玉が流れる。鈍色を映し出したそれは、ふいに音もなく消えた。僕は顔から手を離し、ゆっくりと空を仰ぎ見る。
 






























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