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銀木犀
 
 夏にうまく馴染めない僕は秋を愛しいとさえ思う。余裕のない生活でも金木犀の香りで秋は存在を知らせてくれる。どんなに心がささくれていても少しセピアがかった懐かしい気持ちにさせてくれる。
 プラタナスの並木道を歩く。乾いて少し丸まった落ち葉を踏む。シャンッと気持ちのいい音がして僕は浮き足立った気分になる。ピョンピョンいい音のしそうな落ち葉の上を歩き、うれしくなったりがっかりしたりする。
 そんなことをしているうちにもう家は目の前だ。最後の落ち葉は慎重に選ぼう。だってそれによってこれからの気分が決まってしまうから。
 
 今年は銀木犀をこの目で見たい。そう思ってから何年経ったのだろう。
 






























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