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東海道本線
 
 夏の横浜駅のホームで僕は電車を待っていた。オレンジと緑のストライプが滑り込む。普通の電車の趣きとは違うそれに乗り込む。2人用のシートが2つずつ向かい合った窓際を陣取って走り出すのを待った。…電車は全てこういう座席にしたらいいのに 旅行気分で通勤できるのに 毎日同じことを思う。弁当とお茶を買ってどこか知らないところへ行ってしまおうか… いつもの調子でどうせやりもしないことを考えていると構内にアナウンスが響き渡った。
 〜駅で人身事故のため この電車発車が遅れておりま…
 日常のように起こるそれに誰も感情を揺さぶられることなどないのだろう。僕もいつの間にか特に想いを馳せることはなくなってしまった。
 機械的にホームに降りどうせ急いでなどいないのだからとベンチに座り復旧を待つことにした。
 さっき買った本を鞄から取り出す。
『にんげんだもの』 相田みつを
 
 先日友達から電話がかかってきた。何の用かと思えば聞かせたいものがあるから今から朗読してやると言う。
「『点数』 にんげんねぇ 人から点数を つけられるために この世にうまれてきたのではないんだよ にんげんがさき 点数は後」
 結局点数つけんのかよ、と最後に友達は突っ込んだ。
 
 意地の悪い気持ちでこの本を買ったのだ。
 真新しい折り目のついていないその本を最初から丁寧に捲った。想像以上だった。下唇を噛み笑いそうになるのを堪えできるだけ神妙な面持ちでいられるよう努力した。
 なぁ、当たり前だろう?
 心の中で呟く。
 どうしてこんなに当たり前で尤もなことを、さも自分だけの癒しの言葉みたいに堂々と言うのさ。どうしてこんな言葉で感銘を受ける人たちがいるのさ。「根」とか「下水道」とか、見えない大切なものが大好きなみつを。なぁ、それって当たり前じゃないの?どうして忘れてしまっている人たちがいるの?
 
 可哀相だと憐れまれても僕は解からなくていいよ。
 






























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