野菜ジュース |
TVの中で「かわいいかわいい」と繰り返すひなのを僕はアホかと思うわけだが、高く空気の澄み渡っている秋の空を仰ぎながらきれいなものだけで暮せたらいいのになと思う僕も寸分違わない。胸がむかついているので自販機で買った野菜ジュースはセロリの味だけが舌に残った。気持ち悪いのだけど気持ちいい。あまり使うことのないこの路線の名前は何となく忙しそうで前から気に食わなかったが、ホームには日が射しベンチはまだら模様になっている。電光ではない掲示板がパタリと回る。「もうすぐ電車がきます」ドアの横の手摺りにもたれ暖かい陽光を吸収する。パタリ。「ドアが閉まります。かけこみ乗車はご遠慮ください」コントの細かいネタみたいだ。誰かが回しているのだろうか。僕のイメージとは違い、朝の車内はさほど混んでいない。車掌の男のアナウンスはとてもやさしい。柔らかい語尾をもっと聞きたくて、終点と告げるその声をとても残念に思った。新宿の喧騒の中でも僕のまどろんだ気持ちは抜けかった。乗り換えた埼京線の電車の中でホームを挟んだ反対側の車両を眺める。人は四角い箱に押し込まれたスポンジ人形のようになっていたけど、僕はそれを楽しい気持ちで眺めていた。
2001.9.24 |
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